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【ジャガー・Eタイプ】世界で一番、美しいと言われる車

ジャガー・Eタイプの概要

ジャガー・Eタイプは世界で最も美しい車であると言われています。イタリアの自動車メーカー、フェラーリの創業者エンツォ・フェラーリはジャガー・Eタイプについて「これまで作られたすべての車の中で、最も美しい」と述べました。ジャガー・Eタイプは、世界中でたびたび行われる車の人気投票で必ずと言ってもいいほどトップ3にランクインする人気を誇ります。

ニューヨーク、マンハッタンにあるニューヨーク近代美術館(MoMA)にはスポーツカーが2台所蔵されています。1台はイタリアを拠点とする自動車メーカーの創業者、ピニン・ファリーナがデザインした「チシタリア202」。もう1台が1963年に生産されたジャガー・Eタイプのロードスター、シリーズ1です。

MoMAは「モダン・コンテンポラリーアートの生命力、複雑性及び展開を示すにふさわしい、永久収蔵品の制定、及び、その保存、記録」を使命とし、モダン・コンテンポラリーアートの世界最高のコレクションを誇る美術館です。(参考:MoMA Design Store、 MoMAの理念 https://www.momastore.jp/shop/pages/about_mission.aspx)世界最高のコレクションを謳うニューヨーク美術館に選ばれた車である事実は、ジャガー・Eタイプが世界で最も美しい車であることの証左と言えるでしょう。

「世界のクルマの進化と文化をたどる」トヨタ博物館の展示・収蔵車両はには140台。ここには、ジャガー・Eタイプのロードスター(ボディカラーはホワイト、内装はレッド)が展示されています。トヨタ博物館は、トヨタ自動車創立50周年を記念して1989年4月にオープンした博物館で、ジャガー社の車はEタイプの他に、XK120、XK150を見ることができます。トヨタ博物館は、「19世紀末のガソリン自動車誕生から現代までの自動車の歴史を日米欧の代表的な車両約140台で一望」できるようになっており、ジャガー・Eタイプが歴史的に重要な1台であると考えられていることが分かるでしょう。(参考:トヨタ博物館、https://toyota-automobile-museum.jp

ジャガー・Eタイプは1961年、ジュネーブ・モーターショーでジャガー・XK150の後継車として発表されたスポーツカーです。Eタイプが発表された翌日の新聞は、一般紙からタブロイド紙にいたるまで、ジャガー・Eタイプの話題一色であったと言われています。モーターショーの会場近くで開催された試乗会は、ジャガー社の予想を上回る大人気となり、1日6時間で合計7日間、フルで稼働しました。

翌1962年の春、アメリカで開催された国際自動車展示会であるニューヨーク国際オートショーで発表されてからは、さらに大きな人気を集めました。歌手で俳優でもあったフランク・シナトラがひと目見るなり、「あの車が欲しい。今すぐに」と叫んだという逸話の他、ハリウッドスターやセレブリティ達が我先にとジャガー社のディーラーにオーダーを寄せたとも言われています。俳優のスティーブ・マックイーン、トニー・カーティス、女優のブリジッド・バルドーが所有したことが知られています。ジャガー・Eタイプは、アメリカ市場で大きな売り上げを見せたジャガー・XK150の後継車であることを知らせるために、当地ではジャガー・XK-Eと呼ばれました。1962年のニューヨーク国際オートショーの短い映像を、こちらで見ることができます。

ジャガー・Eタイプは映画の中にもその姿を見ることができます。1971年のアメリカ映画『ハロルドとモード 少年は虹を渡る』、1988年の『アベンジャーズ』、また1997年に始まった『オースティン・パワーズ』シリーズ。それぞれに印象的な場面で登場します。

ジャガー・Eタイプのデザインを担当したのはマルコム・セイヤー。ジャガー社では、Eタイプより前のモデルはすべて、創始者であるウィリアム・ライオンズ氏がデザインを手がけていました。ジャガー・Eタイプは世界で最も美しく、またジャガー社の歴代モデルのなかでもアイコニック的な存在と言われていることを鑑みると、Eタイプがマルコム・セイヤー氏のデザインによるものである事実は興味深いです。

ジャガー・Eタイプのラインナップ

ジャガー・Eタイプは1961年の発売当初、クーペとロードスター(ともに2シータ)、2つのタイプが用意されました。最初のプロトタイプに、1957年に制作されたE2Aが存在します。E2Aをベースに作られたのがジャガー・Eタイプのシリーズ1です。発売から14年間製造されたEタイプにはシリーズ1、シリーズ1 1/2、シリーズ2、シリーズ3と4つのラインナップがあります。最も美しいと評され、人気があったのはシリーズ1です。1966年には2+2シータのクーペが追加されました。

【シリーズ1】
シリーズ1は3,781cc直列6気筒DOHCのXKエンジンを搭載し、最高出力220hp/5,500rpm、最高速度241kmを実現した、夢のように速い車でした。ブレーキはジャガー・XK150から採用され始めたダンロップ製ディスクブレーキ、ステアリングもXK150同様、ラック・アンド・ピニオン方式が採られました。

ただし内装についてはアルミ製のパネル、快適とは言い難いバケットシートなど、高級感や快適性に欠けたことにより、必ずしも評価が高かったとは言えないようです。

【シリーズ1 1/2】
1967年登場のシリーズ1 1/2では、エンジンが4,235ccに拡大されました。1 1/2の特徴はアメリカの安全基準に準じて変更が加えられたことで、前照灯のガラスカバーが姿を消し、ボディとの一体感がなくなっています。

【シリーズ2】
シリーズ2は1968年に登場。シリーズ2もシリーズ1 1/2と同じく、アメリカの安全基準に対応するために、フロントのウィンカー、ブレーキランプ、グリル、フロントとリア両方のバンパーが大型化しました。これらの変更により、シリーズ1で高評価を受けたデザイン性が損なわれていることは否めません。

インテリアについてはシートにリクライニング機能が追加され、ヘッドレストがオプションで選べるなど、高級感を取り戻しています。

【シリーズ3】
シリーズ3は1971年の発表です。エンジンが5,343ccV型12気筒SOHCに変更されました。この変更により、シリーズ2でアメリカの安全基準を満たすために落とさざるを得なかったパフォーマンスを取り戻しています。

エンジニア、マルコム・セイヤー

ジャガー・Eタイプのデザインを手がけたマルコム・セイヤーは1916年3月21日、イギリスのノーフォークに生まれます。数学教師を父に持ち、大学で航空学と自動車技術を学んだ後、初めての仕事はブリストル・エアクラフト・カンパニーで、第二次世界大戦で使用される戦闘機を改良することでした。彼は後にデザイナー、もしくはスタイリスト呼ばれることがありましたが、自分は空気力学者であると常に主張しました。

戦後、マルコム・セイヤーは大学で教職のポストを得るべくイラクに渡りますが、イラクでは最終的に、政府専用艦隊の保守の仕事に就きます。この期間にセイヤーは自動車のスピードアップのために、対数を応用して気流を用いる方法を発見したと言われています。1950年に帰国した後、彼はジャガー社の一員となります。

マルコム・セイヤーの数学と空気力学からなる発明の偉大性は翌1951年、ル・マンですぐに証明されました。エンジニア、ウィリアム・ヘインズが開発し、セイヤーの意見が反映された小舟のような形状とアルミニウム製のボディを持つジャガー・Cタイプは1951年と1953年のル・マンで優勝。

続いてジャガー・Dタイプ。1955年からの3年間、ル・マンを制覇したこのモデルはCタイプと同様、ウィリアム・ヘインズの技術とマルコム・セイヤーが持つ空気力学の知識により、当時、史上最も速くかつ洗練されたレーシング・マシンと言われました。

満を持して、Eタイプの登場です。マルコム・セイヤーが持つ知識の全てが詰め込まれたモデルです。空気の抵抗を味方につけるような滑らかでスリムなライン。楕円形のノーズから微妙なラインを描くフェンダーを通り、絶妙にデザインされたリアに向かって描かれるその造形は、車の完成形の1つであると感じさせます。セイヤーはしかし、Eタイプのデザインを外観の美しさを目指した結果ではなく、純粋に数学的にベストな形状であると述べています。

マルコム・セイヤーが最後に手がけたのはジャガー・XJ-S。XJ-Sはミッド・エンジンのスポーツカーです。XJ-Sはセイヤーの死後5年を経て1975年に生産ラインに入りました。

ジャガー社の歴史の中で、重要な位置を占めるマルコム・セイヤー。日本でももう少しその名が知られてもいいのではないでしょうか。

ジャガー・Eタイプ シリーズ1のスペック詳細

エンジン:3,781cc直列6気筒DOHC XK
最高出力:261 hp / 5,500 rpm
最大トルク:260 ft-lb / 4,000rpm
最高速度: 240km / h
0−100km/h加速:7.2秒
ボディサイズ:全長 4,458mm、 全幅 1,632mm、 全高 1,194mm
車両重量: 1,220kg
駆動方式:FR
トランスミッション:4速MT
乗車定員:2人
新車時車両価格:-

参考
Know Your Designers : Malcolm Sayer | Hagerty Media
Celebrating the life and work of Malcolm Sayer – best known as the designer of the C, D and E-type Jaguars. | Malcolm Sayer Foundation
Jaguar: Malcolm Sayer – the man behind the curves | BBC NEWS
Malcolm Sayer | Hemmings

ジャガーEタイプ
出典:wikipedia

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