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【ジャガー・XJS】ジャガー創始者の思想を色濃く感じさせる最後のモデル

ジャガー・XJS(XJ-S)の概要

ジャガー・XJ-Sは1975年10月、ロンドンのアールズコート・エキシビジョンセンターで開催されたインターナショナル・モーターショーに出品されました。1996年までの21年間で、トータル115,413台が生産されたラグジュアリー・グランツーリスモです。

開発がスタートした時点では、世界で一番美しい車と言われるスポーツカー、ジャガー・Eタイプの後継車と位置付けられていました。しかし開発途中で、最大輸出相手国アメリカでの規制が強化され、オープントップモデルが違法となる可能性が高まったため、グランツーリスモに変更されたという経緯があります。

ジャガー・XJサルーンをベースとしたXJS(XJ-S)の外観上の最大の特徴は、リア・ウインドウの両サイドからテールランプに向かって斜めに落ちるフィンです。デザインを担当したのはジャガーを代表するエンジニア、マルコム・セイヤー。ジャガー・Cタイプ、Dタイプ、そしてEタイプのデザインを担当し、天才エンジニアと呼ばれました。

ジャガー・XJS(XJ-S)は、ジャガーの創始者ウィリアム・ライオンズとマルコム・セイヤーの思想を色濃く感じさせる、優美で端正なジャガーの伝統を体現した最後のモデルです。

1975年の発表当初は、ジャガー・XJ-Sと表記されていましたが、1981年にエンジンがバージョンアップされると共にジャガー・XJ-S HEと変更されました。さらに1991年、ジャガー社がフォードに買収された際に、ジャガー・XJ-SのJとSの間の-(ハイフン)を落としてジャガー・XJSとなりました。ジャガー・XJ-S、XJ-S HE、XJSの詳細は次章でご紹介します。

ジャガー・XJ-Sの開発は1960年代後半にスタートしました。当初、Eタイプの後継として位置付けられていたため、XJFというコードネームが与えられました。後にグランツーリスモに予定が変更されたのに伴い、コードネームもXJ27とされます。

デザインを描いたマルコム・セイヤーは、XJ-Sの全ての仕様が確定する直前の1970年に急死しました。マルコム・セイヤーの後を継いだのは、若手のダグ・ソープ率いるブリティッシュ・レイランドのインハウスデザイナー・チームでした。ダグ・ソープはマルコム・セイヤーに敬意を払い、彼のアイディアを最大限に生かしてXJSをデザインをしたと言われます。

ジャガー・XJSは1972年に完成していました。発表がずれ込んだ理由は、1972年に発生したボディ製造会社とのトラブルや、1974年に当時、ジャガーがその一部であったBLMC社の国有化に際した混乱によるものです。

ジャガー・XJS(XJ-S)の3つの時代

ジャガー・XJS(XJ-S)は、①ジャガー・XJ-S、②ジャガー・XJ-S HE、③ジャガー・XJSと、3つの時代に分けて語られます。

1975-1981年 ジャガー・XJ-S

1975年発表当時は、クーペモデルのみが存在しました。5.3LのV型12気筒SOHCエンジンを搭載。最高速度は230km/時、4速マニュアルまたはATが選択できました。厳格化したアメリカの法規制に対応するための、フロントスポイラーとプラスチック製のバンパーが特徴です。

ドイツではリア・ウインドウの両サイドに付けられたフィンが後方の安全確保に必要な視認性に欠けるとされ、ドイツ国内で車両登録をする際には別途承認を必要とする措置が取られました。

インテリアには、70年代の定番であったプラスチックとアルミが採用されていました。フロントデザインの大きな特徴である楕円形のヘッドランプは、フランスの自動車用ライトメーカー、シビエの特注品です。

イタリアのピニンファリーナは、ジャガー・XJ-Sをベースにした「ジャガー・XJSpider」と呼ばれるコンセプトカーを開発、1978年に発表しました。市販には至っていません。

1981-1991年 ジャガー・XJ-S HE(High efficiently)

ジャガー・XJ-Sは1981年、燃料効率の良いエンジンと、ウッドパネルやレザー・シートなど、豪華な内装をもってマイナーチェンジが行われました。このマイナーチェンジは、発表から6年、期待したほどの売り上げを見せないXJ-Sへの人気が高まるきっかけとなりました。

エクステリアへの変更はバンパーの色がボディと同色になった点、ヒトデホイールと呼ばれる5本のスポークが中央から放射状に伸びるホイールが採用されたこと、バンパー上部へのクロームパーツの追加などが挙げられます。

1991-1996年 ジャガー・XJS

ジャガーがフォード社に買収された後、ジャガー・XJ-Sはジャガー・XJSとなります。後部のサイドウィンドウが拡大され、XJ-Sの最大の特徴であった後部フィンが縮小されました。直列6気筒エンジンを搭載、1992年にはオープントップモデルも発売されました。

1993年になると12気筒モデルの排気量が5992ccに変更。さらにトランスミッションは3速ATから4速ATになりました。

ジャガー・XJSは21年の長きに渡る製造期間に、さまざまなマイナーチェンジを受け、いくつもの特別エディション、スペシャルモデルが発売されています。中でも記念すべきは1995年、ジャガー社の60周年を祝して発売されたジャガー・XJSリミテッドです。ダイアモンドカットのアルミホイール、ジャガーの印章がなされた革シート、専用のウッドシフトなど、内外装ともに豪華な特別仕様となっていました。

ライトメーカー、シビエ

ジャガー・XJSのフロントデザインにおける最大の特徴は、横長の楕円をしたヘッドライトです。このヘッドライトは、ヘッドライト専門メーカー、シビエ(CIBIE)にオーダーして作られました。

シビエは1919年に創業されたフランスの会社です。創業者は、航空業界で夜間飛行のための灯火システムを開発したレオン・シビエ。操業を開始した専門工場では、1日に100個のペースでヘッドランプを製造し、ルノーやプジョー、シトロエンに出荷しました。

レオン・シビエが亡くなった後のシビエ社は、レオンの息子、ピエール・シビエの手腕によって世界有数のライトメーカーとして認知されるようになりました。現在までに150近くの特許を取得しています。ピエール・シビエはまた、ヨーロッパの自動車業界で自動車部品やパーツの統一化、標準化を図るという功績も残しました。

シビエは1961年に、世界で初めて角形のライトを開発します。この角形ライトは、ルノー・R16とシトロエン・Ami6に採用されました。1975年発表のジャガー・XJ-Sに特注された楕円形のヘッドライトは、この角形ライトなくしては存在しなかったでしょう。

シビエはその他、1966年にハロゲンのフォグランプを世界に先駆けて発売し、フォグランプの専門メーカーとしても知られます。

* * *

ジャガー・XJ-Sが発表されたのは1975年のロンドン・モーターショーです。2020年のモーターショーは5月に予定されていましたが、コロナ禍で延期され、2021年7月16日から18日の開催となっています。過去のロンドン・モーターショーの映像がこちらでお楽しみいただけます。

The London Motor Show Video Gallery | The London Motor Show

スペック詳細

ジャガー・XJ-Sクーペのスペック詳細

エンジン:5,354ccV型12気筒SOHC
最高出力:285 hp / 5,500 rpm
最大トルク:294 ft-lb / 3,500rpm
最高速度: 241km / h
0−100km/h加速:8.0秒
ボディサイズ:全長 4,870mm、 全幅 1,793mm、 全高 1,261mm
車両重量: 1,750kg
駆動方式:FR
トランスミッション:3速AT
乗車定員:2人+2
新車時車両価格:-

ジャガー・XJS 4.0コンバーチブルのスペック詳細

エンジン:3,980cc直型6気筒DOHC
最高出力:230 hp / 4,700 rpm
最大トルク:270 ft-lb / 4,000rpm
最高速度: 234km / h
0−100km/h加速:7.5秒
ボディサイズ:全長 4,820mm、 全幅 1,793mm、 全高 1,276mm
車両重量: 1,830kg
駆動方式:FR
トランスミッション:5速MT
乗車定員:2人+2
新車時車両価格:-

ジャガー・XJS

出典:wikipedia

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