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【ジャガー・XK120】戦後初のスポーツカー

ジャガー・XK120の概要

ジャガー・XK120はジャガー社による戦後初のツーシート・スポーツカーです。1948年、西ロンドンのアールズコートで開催されたロンドン・モーターショーで発表されました。戦前、SSカーズと称していたジャガー社は、1945年3月の株主総会で社名を変更。創始者ウィリアム・ライオンズはその際、「新社名『ジャガー』は、SSカーズとは異なり独創的で他の外国名との関連を疑われたり混乱を招くことがない」と述べました。この発言の真意は、「SS」がドイツのアドルフ・ヒトラー親衛隊の略称であったため、悪評を避ける意図があったとされています。XK120はジャガーと社名を変更してから発売された初めてのモデルでもあります。

ジャガー・XK120と同時に発表されたのがジャガー・マーク5です。マーク5は戦前に設計されたプッシュロッドエンジンが採用された最後のモデルとなりました。ただしマーク5にはジャガー社として初めて採用した機構が数多くあります。独立したフロントサスペンション、ハイドロリックブレーキ、フェンダースカート、円盤ホイール、16インチの小径かつ幅広なタイヤ、点滅する方向指示機を採用したのは全てマーク5がどのモデルよりも先でした。

一方、XK120は戦前から開発がスタートしたXKエンジンを初めて搭載したモデルです。驚いたことに、モーターショーの開催が発表されてからライオンズがほんの数週間でデザインし、当初200台限定で生産される予定でした。ところが「世界最速の車」への高まる需要に応じる形で計画は変更され、生産が追いつかないほどになり最終的な販売総数は12,056台です。

流れるような美しいボディラインと革新的なツインカム・エンジンを搭載したXK 120は見る間に人気となり、オープンタイプのロードスターにプラスして1951年にはFHC(フィックスドヘッドクーペ)、1953年にはDHC(ドロップヘッドクーペ)が追加されました。

1949年に製造が開始されてからの2年間はスチールの不足により、ウッド製フレームにアルミ製のボディを組み合わせたタイプが242台製造されました。その後スチールが安定供給されるようになり、ボディがスチール製に変更され、全重量は51kg増加しています。

XK120の120とは、アルミ製ボディモデルでの最高速度が120mph(時速193km)であることを意味しています。1949年に発売された一台目は当時のハリウッドの大スター、クラーク・ゲーブルが購入しアメリカでの人気に火をつけました。実際、生産されたXK120の9割がアメリカ向けに製造され、現在取引されている個体に左ハンドルが多いのは、このような理由によります。

XKエンジン

XKエンジンの開発は1938年にスタートし、第二次世界大戦中も戦後モデルの発売をにらんで続行され、1943年にはいくつかのプロトタイプが制作されます。もともとはレース用を目指しての開発でしたが、終戦後はサルーンを目的に設計が進められました。開発に関わったのは3人の優秀なエンジニア、ウィリアム・ヘインズ、ウォルター・ハッサン、クラウド・ベイリーで、1948年までに3.5L6気筒OHCヘミヘッドXKエンジンが完成。この時のライオンズの指令は「より美しいエンジンを」というものでした。XKエンジンはXK120に採用されて以来、長年ジャガーの主力エンジンとして活躍しました。

XK120のエンジン誕生の背景には、XG、XF エンジンの存在があります。1943年にテストドライブが行われた1,766cc4気筒のXGエンジンは戦前のBMW328エンジンに似ており、1.5Lのシングルオーバーヘッドカムエンジン(SOHC)をベースに製造されました。続いてエンジンの開発チームは翌年、現在では有名になったダブルオーバーヘッドカムシャフト(DOHC)を採用した1,732cc4気筒のXFエンジンのテストドライブを行います。その結果、XGエンジンはプッシュロッドやロッカーアームからのノイズがあること、またXFに比べてガスフローが良くないことが判明し、XFの採用が決まりました。さらに開発は進められ、1947年には3.2L6気筒エンジンが開発されるに至り「6気筒XJ」と名付けられます。これもテストドライブにかけられ、さらなる低速での高トルクを追求した成果として3,442cc6気筒の「6気筒XK」につながり、これがXK120に搭載されます。

XKエンジンで特徴的なのは天辺に配置された合金のデュアルカムカバーです。また、XKエンジンでは、通常よりサイズの大きな2つのバルブを格納するスペースを確保するために深さのあるシリンダーヘッドを採用する必要がありました。同時に、半球状の燃焼室に出入りするガスの流れを過度に制限しない方策が求められてもいました。これら2つの条件を満たすためになされたのが、通常より長いバルブステムを使用しバルブ間の角度を広く確保する設計でした。こうするとバルブのトップが極端に離れることになるのですが、それを効率的に操作するには、デュアルオーバーヘッドカム(DOHC)が最適であると判断された結果、XKエンジンはDOHCとなったのです。

エンジニア、ウォルター・ハッサン

ジャガー社は多くの才気あふれるエンジニアに恵まれましたが、その中でも群を抜いていたのがウォルター・ハッサンです。ウォルターは1905年4月25日、北ロンドンで生まれます。船の模型作りを趣味とする叔父に影響を受けたウォルターは幼い頃から機械に対する素質を備え、それを見てとった叔父にエンジニアリングを学ぶことを勧められます。叔父のアドバイスを受け入れた彼は、現在ロンドンメトロポリタンユニバーシティと改名された、当時のノーザンポリテクニックでエンジニアリングを学びました。

ノーザンポリテクニックで申し分ない成績を収めたハッサンは15才の時、創業間もないベントレー社で初めての職を得ます。入社後エンジン部門、シャーシ部門を経て自動車製造の全工程を経験する中で異才を放った彼は、やがてベントレー社の全容を理解し把握するよう求められます。程なくしてロードテスティング部門に配属され、続いて研究部門、さらにはメカニックとしてレースにも参加。たちまちベントレーの最も重要なメカニックと目されるようになったハッサンは、ベントレー社の社長をはじめ筆頭株主、代表ドライバーであるウルフ・バーナートからの絶対的な信頼を得るに至りました。特にウルフとはプライベートでも良好な関係を築き、生涯を通して友情を育みました。

しかしベントレー社は大恐慌の影響を受け、1931年にロールス・ロイスに合併されます。ハッサンはベントレーを離れ、自作のレーシングカーでウルフと共にレーシングイベントでいくつかの功績を残します。その頃、ハッサンの評判を耳にしたウィリアム・ライオンズはある時、古い友人であるトミー・ウィズダムにハッサンについて尋ねました。トミーはハッサンを業界で最も有能なエンジニアの一人と評し、それを聞いたライオンズは1938年、ハッサンをジャガー社にスカウトします。すぐにジャガー社のエンジニアとしてXKエンジンの開発に着手したハッサンでしたが第二次世界大戦開始後、1939年9月からの1年間、ブリストル・エアクラフトカンパニーの航空エンジン部門で働き、1940年にジャガーに戻ります。その後8年間ハッサンはXKエンジンの開発に従事しますが、1948年にXK120が完成を見るとジャガー社を去り、今度はコンベントリー・クライマックス社に入社します。

コベントリー社でのハッサンは、エンジニア、ハリー・マンデイと共にFW(フェザーウェイト)エンジンの開発に携わります。FWはレーシングバイクのエンジンとしても発展、FWを導入したロータス社をバイクレースでのワールドチャンピオンに導きました。その後1963年、ジャガー社がコベントリー・クライマックス社を買い取ったため、ハッサンはハリー・マンディと共に再びジャガー社に戻ってきました。

戦後、イギリスの自動車産業界は材料の不足や恐慌により大きな打撃を受けました。しかしその混乱のさなか、業界全体の技術革新を支え続けたエンジニアの一人がウォルター・ハッサンであると言えるのではないでしょうか。

スペック詳細

ジャガー・XK120ロードスターのスペック詳細

エンジン:3,442cc直列6気筒DOHC
最高出力:105 hp / 5,000 rpm
最大トルク:144 ft-lb / 3,000rpm
最高速度: 160km / h
0−100km/h加速:16秒
ボディサイズ:全長 4,267mm、 全幅 1,549mm、 全高 1,270mm
車両重量: 1,145kg
駆動方式:FR
トランスミッション:4速MT
乗車定員:2人
新車時車両価格:3,940 USD

ジャガー・XK120FHCのスペック詳細

エンジン:3,442cc直列6気筒DOHC
最高出力:158 hp / 5,000 rpm
最大トルク:195 ft-lb / 2,500rpm
最高速度: 200km / h
0−100km/h加速:11秒
ボディサイズ:全長 4,394mm、 全幅 1,575mm、 全高 1,359mm
車両重量: 1,370kg
駆動方式:FR
トランスミッション:4速MT
乗車定員:2人
新車時車両価格:ー

ジャガー・XK120DHCのスペック詳細

エンジン:3,442cc直列6気筒DOHC
最高出力:158 hp / 5,200 rpm
最大トルク:195 ft-lb / 2,500rpm
最高速度: 190km / h
0−100km/h加速:10.3秒
ボディサイズ:全長 4,394mm、 全幅 1,575mm、 全高 1,334mm
車両重量: 1,130kg
駆動方式:FR
トランスミッション:4速MT
乗車定員:2人
新車時車両価格:ー

出典:ジャガー・XK120

参考
Six Cylinder XK Engine 1948 – 1992 | Jaguar Heritage Trust
Four Cylinder 2 Litre XK Engine – 1948 | Jaguar Heritage Trust
William Lyons | Jaguar Heritage Trust
History Of The Jaguar XK Engine | CLASSICS WORLD
Light at Heart: Jaguar’s Aluminium XK Engine | Stratstone

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