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【MGC】50年後に再評価されたオープンカー

MGCの概要

MGCは1967年10月から1969年8月まで製造されたスポーツカーで、2年弱の間に約9,000台が製造されました。MGCはMGBのバリエーションの一つという位置づけにあり、外観はMGBとほぼ同じと言えるでしょう。ただ、エンジンをはじめサスペンション、フロアパンは刷新されています。ユーノス・ロードスター誕生までの間、世界ナンバーワンの売り上げ台数を誇ったMGBの圧倒的な人気とは対照的に、MGC は販売開始直後から称賛を受けたとは言い難く、結果として製造台数は1万台にも満たないまま発売から2年足らずで製造中止となりました。大多数がアメリカに輸出されたMGBに対して、MGCは製造された約9,000台うち、アメリカに輸出されたのは半数以下にとどまりました。

MGCに対する当時のメディアやファンの評価としては、アビントン工場で作られた車にも関わらずその良さが失われてしまった、アンダーステアとなる傾向がある、またエンジンとサスペンションの変更により重量バランスに疑問があるというものでした。アビントン工場とはMGが1929年に移転して操業を開始したイギリスのオックスフォードシャーにある工場で、MGBの製造中止と同じタイミングで1980年に閉鎖されています。

MGCの販売台数がふるわなかった原因としては、プライスレンジが同じで、MGCと同様に直列6気筒エンジンを搭載したトライアンフのTR6とGT6の存在もありました。1969年発売のトライアンフ ・TR6は、MGCと違い新しいデザインを与えられ、発売をスタートした1969年だけで15,317台、MGC1,757台の10倍以上を売り上げています。トライアンフ ・GT6はGMCより455ドル安い2,895ドルで販売され、最終的には40,926台を売り上げました。MGCに対する評価が低かったもう一つの理由として、オースティン・ヒーレー3000マーク3の後継車としては、パフォーマンスが期待されていたほど素晴らしいものでなかったことも挙げられます。

MGCは当時の販売会社であったBMC傘下のオースティン・ヒーレー3000マーク3(大排気量6気筒OHV搭載のオープンスポーツカー)の後継車として期待されていました。オースティン・ヒーレー3000マーク3にモデルコードADO51が与えられたのに対し、MGCにはADO 52というモデルコードが与えられます。ADOとは、オースティン・ドローイング・オフィス(Austin Drawing Office)の頭文字を取ったものです。ちなみにMGBにはADO23、MGA1600にはADO31というコードが割り振られました。

MGC GT(登録番号SGY 766F)は1967年にイギリスのチャールズ皇太子がを購入し、30年後にウィリアム王子に譲ったことが知られています。

MGCのエンジン

開発当初、MGBに採用されていたBMCのBシリーズエンジンが使われる予定でしたが、実際はCシリーズと呼ばれるOHV直列6気筒2,912ccエンジンが採用されました。これはオースティン社で製造されたAシリーズ、Bシリーズとは違い、イギリスのコンベントリーにあるモーリス・エンジン社で1954年から1971年に製造されたものです。モーリス・エンジン社はMGの創始者であるウィリアム・モリスが所有した会社の一つです。製造会社が違うため当然ですが、Aシリーズ、Bシリーズとはレイアウトもデザインも大きく違っていました。

Aシリーズエンジン、Bシリーズエンジンとの違いはカムシャフトの位置です。A、B、Cシリーズ、どのエンジンも車内から見て左側に吸気口と排気口が配されていましたが、Cシリーズエンジンのカムシャフトだけは右側にありました。つまりCシリーズエンジンには、A、Bシリーズのエンジンがプッシュロッドのためにシリンダーヘッド内に確保しなければならなかったスペースを必要としないことを意味します。その結果、本来ならばより効果的な換気を可能にすることもできたはずでした。しかし、キャブレターの構造が単純化され、様々な設計に対応できるようにされていたことがここでは災いし、その長所が生かされる結果にはなりませんでした。また、Cシリーズの特徴としてはその他に、クランクケースがより強固なリブ構造を持っていたことがありました。

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実はMGCに採用されたエンジンとは別物でありながら、「Cシリーズ」と呼ばれるエンジンが日本に存在しました。1950年代の日産は、Bシリーズエンジンを搭載したオースティンのA40とA50をライセンス生産していました。日産はオースティンの部品をもとに、しだいに全てのパーツを独自に開発するようになりますが、Bシリーズエンジンをもとに独自に開発を行った結果、Cシリーズエンジンを生み出します。Bシリーズエンジンはリアのクランクシャフトからも漏れが問題としてありましたが、これを改善して、改善後のエンジンをCシリーズと名付けたのです。

日産が生み出したCシリーズエンジンは、当時日産で技術指導を行なっていたアメリカ人のエンジニア、ドナルド・ストーンによるデザインでした。そのためこのエンジンはデザイナーの名前にちなんで、「ストーン・エンジン」と呼ばれることもあります。ストーン・エンジンは日産のダットサン210型に採用され、1958年のオーストラリアラリーで優勝したほか、他の日産車にも多く採用され活躍しました。

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現代の車で直列6気筒を採用しているのはメルセデス・ベンツとBMW、復刻版のトヨタ・スープラのみです。特にシルキーシックスと呼ばれたBMWは、ほとんどのメーカーがV型を採用しているのに対し、1960年代から直列6気筒にこだわってきました。直列6気筒エンジンは、長さがあるため広いスペースが必要であるという問題がある一方、究極のエンジンとも言われており、そのスムーズで振動特製に優れた走りは高く評価されています。

MGCのスタイリング

MGCのスタイリングについてMGBと大きな違いがないのは前述した通りですが、一番の特徴は、直列6気筒エンジンを収めるためのボンネット部分に見られる、バルジという平らなふくらみです。MGのファンサイトで写真の投稿とともに「路上で見かけたけど、MGBかMGCか見分けがつかない」、「ボンネットがふくらんでるからMGCだよ!」という会話も見かけました。その他にMGBと異なるのは、フロアパンとブレーキです。ブレーキはフロントにブースターアシストの11インチディスクブレーキ(ガーリング社製)、リアに10インチのバキューム・サーボ(真空制動倍力装置付き)・ドラムブレーキを搭載。バキューム・サーボ・ブレーキとは、真空倍力装置によって、小さい力で大きな制動力を得られるものです。MGCのラインナップには、オープンモデル、クーペモデル(GT)、レーシング・スペシャルモデル(GTS)が存在しました。

MGCのタイヤ

MGCに採用されたタイヤはピレリ社のタイヤCA67。ピレリ社はイタリアはミラノにヘッドオフィスを置く会社で、過去にはファッションや再生可能エネルギーなどの事業を手がけていました。現在は自動車、バイク、自転車用タイヤの専門メーカーとしてヨーロッパを中心に知られています。日本車に採用されることはあまりありませんが、ブリジストン、ミシュラン、グッドイヤー、コンチネンタルに次ぐ世界で5番目に大きなタイヤメーカーです。創業は1872年、ゴム製品とスキューバダイビング用の空気タンクの部品を作っていましたが、1907年からタイヤサプライヤーとして、数々の大会のスポンサーであり続けています。1950年のF1開催スタートからアルファロメオ、マセラティ、フェラーリなど、イタリアチームにタイヤを供給してきました。さらにグランドAMロレックスレース、スーパーバイク世界選手権のスポンサーも務めていました。

ピレリタイヤはその外観に特徴があります。国内メーカーのタイヤはエッジが角ばったフォルムをしていますが、ピレリのタイヤ はエッジが丸みを帯びた柔らかな印象があり、またモータースポーツで培った技術を反映した高い性能に定評があります。一方、ピレリノイズという言葉が生まれるほど、ロードノイズが大きいという欠点があり、静寂性を求める場合には向かないかもしれません。

ピレリタイヤでは1964年から毎年カレンダーを発行(ピレリカレンダーと呼ばれます)し、著名なカメラマンが起用され、登場する女性モデルの話題性と毎年20,000部しか発行されないという希少性により知られています。ピレリの主要な顧客やセレブリティー向けのコーポレートギフトとされ、一般販売はされません。1987年には16歳だったイギリス人女優のナオミ・キャンベル、2016年にはテニス選手のセレーナ・ウィリアムスや言わずと知れた小野ヨーコ、2017年には女優ニコール・キッドマン、2018年にはアメリカの女優でコメデイアンであるウーピー・ゴールドバーグなどがフューチャーされています。

発売当時の不人気ぶりとは反対にMGCは現在、6気エンジンが搭載されていることと、その希少性から、クラシックカーファンの間では存在感を増しています。

MGC GTのスペック詳細

エンジン:2.9L直列6気筒OHV BMC Cシリーズ
最高出力:145 hp / 5,250 rpm
最大トルク:170 ft-lb / 3,500 rpm
最高速度:202 km / h
0−100km/h加速:9.8 秒
ボディサイズ:全長 3,891 mm、 全幅 1,521mm、 全高1,270mm
車両重量:1,180 kg
駆動方式:FR
トランスミッション:4速MT
乗車定員:2人
新車時車両価格:$3,350


出典:wikipedia MG・MGC

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