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クルマと生きる物語 – Vol.2「教習所で生まれたひと夏のドラマ」from 映画『森山中教習所』

第二回「クルマと生きる物語」シリーズ

この世に走る車を運転している人たちはみんな、
教習所に通っていた人なんだなあ。

そんな当たり前のことをしみじみ思ったのは
私自身が実際、教習所に通っていた時だ。

車を愛する人々の共通の記憶、教習所。
今回ご紹介するのは、そんな教習所で生まれたひと夏のドラマです。

「教習所で生まれたひと夏のドラマ」from 映画『森山中教習所』真造圭伍

森山中教習所

あの夏、あの夏休み、何をすればいいかわからなくて
ただ、遠くに行けば何かが変わる気がして
なすすべがなかった僕は、運転免許をとりにいった。

無我夢中だったか、必死だったか。
いや、たぶんあの頃の僕は、
あいつに会いに、あの場所に通っていた。

他人の感情を思いやることが苦手な能天気な少年・清高は
高校時代に一度だけ話したことがある根暗な元同級生・轟木と再会する。

高校を中退してから行方不明だった轟木は、いつのまにかやくざの道を進んでいた。
将来について考えることを避けていた清高にとって、
自分の道をしっかり決めて歩く轟木は、特別な存在のように思えた。

廃小学校を改築してつくられた、さびれた未認可教習所を
清高と轟木は毎日毎日ぐるぐると、教習車のシティカブリオレで駆け回る。
アクセルを踏むごとに、ブレーキを踏むごとに、
夏休みと教習期間は少しずつ終わりに向かっていく。

クルマがあったらさ、轟木はどこに行きたい?
クルマがあったらさ、デートとか、旅行とか、仕事だっていろいろなものが選べるようになるんだ。
なあ、轟木は、免許取ったら、どうするの?

清高のそんな質問に、轟木は何も答えないが、
それでも清高から逃げもせず、教習所にやってくる。
つかみどころのない人間だなと思いながらも、清高は轟木とすごす夏休みを謳歌する。

どこかへ旅立つために免許をとりたい清高と
やくざの道を生きるために免許をとらねばならない轟木。
運転免許を取得するという行為を軸に、彼らはすれちがっていく。

あの頃はいつものように一緒にいたのに、
大人になってから、一度も会っていない誰かがいる。
いつの間にかすれ違って、心のどこかでなんとなしに覚えていて。
そうして僕たちは、どこかで別々に、ちゃんと大人になっていくのだ。

今日のストーリー

映画:『森山中教習所』真造圭伍

何をするにも興味を持てない清高は、帰り道に元同級生のやくざ轟木の車に轢かれたことで再会する。大事にされないために、免許を取りたいという清高のためにやくざたちは教習所代を払おうと提案。清高は久々に、轟木と夏休みを過ごすことになる……。

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