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60年代のデザインに魅せられて。日本のロイヤルが認めた”ホンモノ”を乗り継ぐ。

何百万円とかかる大きな買い物は、生涯数少ない特別な経験。だからクルマを買うと決めたら、とことん検討するに越したことはない。
価格、耐久性、機能性などスペック面や、周囲の意見はもちろん気になる。
けれど、ありきたりなモノサシだけで選んでしまうのは、少々もったいない気がする。

自分らしい選び方をすれば、自然と愛着も湧くだろう。

クルマに限らず、ものの選び方にこだわれば、生活そのものにも強い愛着を持ち始めるかもしれない。

この記事に登場する曽根原興史さんはの持ち物は、どれも生活に彩りを与えているように見えた。もちろんクルマもそのひとつ。曽根原さんが大切にする、「ものの選び方」を聞かせてもらった。

好きが詰まった、アメリカン古民家とグロリア

西武池袋線・入間市駅から徒歩20分ほど歩いたところに、ジョンソンタウンと呼ばれる地区がある。「米軍ハウス」という平屋の古民家と、「平成タウン」という現代的低層新築住宅が軒を連ね、アメリカの片田舎のような雰囲気を楽しめるお散歩スポットだ。曽根原さんは5年前から、ジョンソンタウン内にある4LDKの平屋家屋に家族4人で住んでいる。クリエイティブディレクターとして都内のクライアントを数多くもつにも関わらず、住処を移した。

曽根原「60〜70年代のアメリカンデザインがとても好きなので、ここに住む以前からこの街の存在は知っていました」

ジョンソンタウンに遊びに来た時に偶然空いていた一棟をその日のうちに内覧。家族の同意を得るために、スーパーの位置や都心へのアクセスなどを調べ上げ、しばらくしてアメリカン古民家での暮らしがスタートした。

曽根原「もともと平屋に住むのが夢だったし、アナログなものが好きだから、古民家にも抵抗はありませんでした。自分で修理したりDIYしながら住むことを楽しんでいます」

グロリア

自宅横の駐車スペースも自らDIYした。
石畳の上に鎮座するのは、日産プリンス社製のグロリア。1966年に日産と合併するまで存在していたプリンス自動車工業によるデザインを受け継いだ「HA30」という車体だ。

まるで海外の白黒映画に登場しそうな出で立ち。そんなグロリアを構成しているディテールを見せてもらった。

曽根原「現代のクルマは燃費のことを考慮したディテールが採用されがちですが、これはデザインのことしか考えてないと思う(笑)。ある意味、本気のデザインって言っていいと思うんです」

グロリア

お気に入りポイントの一つは、両サイドのライン。角が立ったエッジがどことなくアメリカっぽい。

グロリア

丸い目が縦にふたつずつついたヘッドライトがアイデンティティ。縦目4灯のグロリアということで、「タテグロ」と呼ばれているそうだ。テールランプも上下2段のデザインが採用されている。

曽根原「僕は昭和の人間なので、こういう四角いクルマに憧れるんですよね。デザインはアメリカ車の影響を大いに受けているのですが、グロリアは国産車なので、サイズ感がそこまで大きくありません。軽自動車の隣に並んでもコンパクトに見えるんですよ。そのせいか、他にはない独特の雰囲気が凝縮されている感じがします」

日本のロイヤルに認められたクルマを当時の姿で乗る

グロリア

続いて内装を見せてもらった。運転席と助手席の間に隔たりのない、ベンチシートが採用されている。多くの車の場合、席と席の間に真ん中にシフトレバーが取り付けられているが、この車体はハンドル付近のステアリングコラムに取り付けられている。この、コラムシフトと呼ばれるシフトレバー、最近のファミリーカーでは車内スペースの有効活用のため採用されることもあるが、一時は見た目が格好悪いと人気がなくなった時代もある。

曽根原「このクルマが作られた時代には、ベンチシートでコラムシフトという組み合わせはよくあったみたいなんですけど、僕からすると憧れです」

ダッシュボードのメーターも、もちろんアナログ。デジタル表示のものよりも見やすそうだ。そしてこれらの内装はすべて製造当初から変更がないノーマル状態を保ってきた。

曽根原「内装の部品やシートなどはどうしても劣化してしまいますが、当時の雰囲気を味わえるように元の姿が残っているノーマル状態のクルマを探しました。自分で改造したりするのも楽しそうだけど、僕は修理しながら元の姿をキープさせることの方に魅力を感じますね」

グロリア

曽根原「後部座席にも珍しい機能があります」と見せてくればのは、シートに取り付けられたラジオチューナー。なぜここに取り付けたのだろう。その答えグはロリアが持つ歴史にあった。

曽根原「プリンス社のグロリアは、宮内庁に多数納車されていたという経歴があります。皇族など、運転手のいる人たちが乗るクルマだったんですよ。だから、後部座席からラジオが操作できるようになっているらしいです」

つまり、本人の言葉を借りるとこの旧グロリアは「日本のロイヤルが認めた”ホンモノ”」なのだ。そのような歴史あるクルマが、当時の内装のまま今に受け継がれていること感じる。

日本に数少ない縦目グロリアを、後世に引き継いでいきたい

グロリア

しかし、製造から50年ほどが経った現在、修理をしようにも純正パーツは入手不可能だ。手入れもかなり大変ではないだろうか。

曽根原「パーツはインターネットでかなり探しました。例えば窓のパッキンは、大阪のゴム会社が購入者を募って受注生産をしていたのでそれに応募して、生産が始まってから2年後にようやく手に入りましたね。ゴム会社も、もうこの世に無いものを作るわけだから、試行錯誤をかなり重ねてくれたみたいです」

ピカピカに掃除されてはいるものの、よく見ると、窓パッキン以外のゴム製品や、床板などにも劣化が進んでいる。曽根原さんは、これらの壊れている部分もいつか直してあげたいと語る。

曽根原「故障して、直すと、さらに可愛くなるんですよね。旧車の購入を考えてる人は、車体価格とは別に少なくてもプラス100万円くらいの修理代を見積もって探したほうがいいと思います。修理があるのは当たり前だと思っておけば、より愛着も湧くんじゃないかな。手間をかけたぶん、自分の色に染まっていく感じを楽しめますよ」

燃費がよくて壊れにくい新車も魅力的だ。しかしお利口なクルマであればあるほど、オーナーとの結びつきは弱くなってしまうのかもしれない。

曽根原「新車には、高性能なカメラやAI、電気で動くモーターなどが搭載されていますが、僕はどちらかというとアナログなクルマの方が心地いいなと思います。自分の手で操作している感覚をより味わえるから。クルマ以外にも、気に入ったアナログ製品は買い集めています」

グロリア

自宅には、曽根原さんが収集した小型ブラウン管テレビと8mmカメラがあった。
これらのアナログ製品も、長持ちするように手入れをしていきたいと話す。

次に、ボンネットの中身を見せてくれた。他の部品同様、故障して手に入るものは当時のものを、なければ代替品を積み替え、ているそう。ホースのような劣化が早いものは頻繁に取り替えるなど、手入れに余念が無い。

グロリア

曽根原「部品もワンオフでしか手に入らない時代が来て、そのうち規制されてしまうかもしれませんね。ガソリンスタンドがレアな存在になったら、コイツも電気自動車になる時が来るのかな。あんまり気乗りしないけれど、受け入れなければいけない時が来るのかもね」

最後に、このクルマの今後について話してくれた。

曽根原「長く乗っていきたいです。きっと手放さないんじゃないかな。ペットに”手放す”という感覚が無いのと同じで。そして次の世代にも引き継いでいきたいですね。少し先の未来でいうと……本人が希望すればだけど、息子に女の子とのデートに使って欲しいな(笑)」

グロリアが今後、どんな色に染められていくのか、そして次はどんなオーナーの色に染まっていくのか、楽しみだ。

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