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影響を受けた数だけ、自分らしさが見つかる。フィアット パンダが似合う男ができるまで

自分にとって一番しっくりくるライフスタイルを選びたいと、誰もが願っている。そのためには、理想像を決めるための参考資料が必要だ。だから懸命に情報収集をしたり、未来予想図を描いたりしてみる。
そうやって、自分のライフスタイルを模索しつづけていると、気づいたときには選択肢が両手に溢れ選べずにいた。なんてことにもなるのだろうか。少なくとも、そういう不安を抱えている人はいるのかもしれない。
それゆえ、オリジナリティのあるのライフスタイルを持った人に、特別憧れてしまうのだと思う。

インタビューに応じてくれた松本邦利さんの場合、自分らしい暮らしはどのように完成していったのだろう。そして愛車であるフィアット パンダが、暮らしの中でどのような存在であるか、話を聞いた。

工業デザイナーが作った、コンパクトで機能的なデザイン

昔ながらの機構を備えたフィアット パンダ。その佇まいは素人目から見ても魅力的だけれど、決して性能に優れているとは言えない。松本さんはなぜ、このクルマを選んだのだろう。購入した当時の話を聞いてみた。

松本「職場が都内から埼玉に変わることをきっかけにクルマを買いました。僕の兄が昔からスカイラインのジャパンという古いクルマに乗っていたので、もともとクラッシックカーには馴染みがあったんです。中でもパンダは学生時代の先輩が乗っていた車種ということもあり、憧れがありました」

フィアット パンダ

数あるクルマの中でもパンダにした決め手は、クルマのデザイナーだったという。このクルマをデザインしたのは、ジウジアーロというイタリアのデザイナー。

松本「自分がかっこいいなと思うクルマのデザイナーについて調べていくうちに、ジウジアーロに出会いました。彼は長年工業デザインを手がけていた背景があり、イタルデザインの創設者、他とは少し違った雰囲気をもつクルマを数多く手掛けていました」

フィアット パンダ

一見コンパクトに見える車体だけれど、クルマに乗り込むと思いの外広々としている。シートの色やダッシュボードのレトロな雰囲気が可愛い。むき出しの鉄板が機械っぽさを醸し出している。

松本「無駄な曲線が無い分、車内は広く感じますよね。耐熱機能が低いので、夏場はアツアツになりますよ」

フィアット パンダ

よく見るとサイドミラーは手動で調整するもののようだった。現代のクルマにはない道具感に、愛着を感じる。

角ばったフォルムや、コンパクトなのに居心地のいい車内空間は、他のクルマにはない特徴かもしれない。松本さんはこのデザインを気に入り、パンダの購入を決めた。

松本「ジウジアーロによるデザインのパンダの中でも、なるべく年式が新しく、マニュアルにこだわりました。セレクタ(オートマチック)も良いのですが車を自ら動かしている感が欲しかったので」

フィアット パンダ

そうして出会ったのが、2000年式のパンダ。走行距離はおよそ9000kmだったという。パンダのデザインは、2003年にパンダ2が販売され丸みを帯びたデザインに変更されているので、旧デザインのパンダの中では割と新しい。

製造当時のデザインを生かしたオリジナルの状態で購入したが、今後はカスタマイズも検討しているそうだ。

松本「バン仕様にカスタマイズできるキットが存在しているんです。トランク部分を少し拡張して、観音開きにできるというものなんですけど、日本にはありません。海外のウェブサイトから、地道に探しています」

子どもの頃に好きだった遊びを、クルマと辿る

フィアット パンダ

この日のドライブの目的地は、松本さんがよくバス釣りをするという「びん沼川」。朝霞市にはいくつかの釣りスポットがあるが、家から30分ほど離れたこの場所が、比較的空いている穴場なのだそう。

到着すると、陽気に誘われた釣り人たちが、河原に集まっていた。

フィアット パンダ

松本さんが釣りを始めたのは、クルマを買ってからだという。

松本「クルマがあると、行動範囲が変わりますよね。大きな荷物を持ち運ぶこともできます。そのおかげか、以前とは趣味の質が変わりました。子どもの頃に好きだった遊びを、大人になってからもう一度やっているような感覚です…釣りの実力はまだまだですが…」

元々は通勤の目的で松本さんの手元に渡ったパンダだが、移動の制約を減らす役割を担うことで、乗る人のライフスタイル全般に変化をもたらしたようだ。

この変化はどんな人にも起こりうるものなのだと思う。釣りなどの具体的な目的を持っていなかったとしても、クルマという翼を得ることで、思いも寄らない趣味に目覚めたり、素敵な場所との出会いに恵まれるのかもしれない。

松本さんが追いかける『The』

フィアット パンダ

びん沼川で釣りを終え、再びクルマに乗り込んだ。帰り道の車内では、外遊びで昂った気持ちをなだめる、渋いジャズソングが流されていた。

CDプレイヤーは購入時に取り付けられたもの。メカニックな外見が、強い存在感を放っている。

松本さん「スピーカーにUSB接続ができないから、CDを持ち込んで音楽をかけるしかないんですよね」

フィアット パンダ

助手席のボックスには、たくさんのジャズCDが積み込まれていた。ジャズを聴きながら、ドライブをする休日、なんて渋いのだろう。

松本「若い頃、音楽をやっていたんです。大学時代までロックをやっていて、上京したのも音楽で食っていくためでした。ジャズを聴くようになったのは、上京してからでしたね」

松本さんがジャズにのめり込むきっかけとなったのは、バンド活動の傍らはじめた、青山のBLUE NOTE TOKYOでのアルバイトだった。当時所属していたロックバンドが影響を受けていたイギリスのロックバンド・レディオヘッドが、「キッドA」と同時進行で進めていたアルバム「アムニージアック」でジャズに強くインスパイアされていたことを知り、日本のジャズの最高峰であるBLUE NOTE TOKYOで学びたいと考えたのだ。

アルバイトをしていた4年間、世界の一流アーティストのパフォーマンスに触れるうちに、ジャズの魅力に取り憑かれていった。

松本「ジャズはバンドと違って、ボーカリスト単体、ギタリスト単体、みんな個人で活動ができたりもするんです。その場にいるメンバーが各々楽器となり、タッグを組んで演奏できる、そんなところが魅力的でした」

フィアット パンダ

その後音楽活動を中止し、大手アパレルブランドに就職。「結局音楽だけで食べていくことができなくて」と語る松本さんだが、新天地での活躍は目覚ましいものだったという。10年間務めるあいだ、社内でもトップクラスの販売実績を出しつづけていた。その後、知人からの誘いで、現在のアパレルショップへと移籍した。

松本「ロックとジャズの両方を深く追求した経験は、アパレルの仕事に大いに生きました。販売員は、接客をすることで洋服の価値をお客さんに伝えるのが仕事です。僕は洋服のバックグラウンドや、洋服が作られた年代のカルチャーまでをお伝えするよう心がけてきました…もちろんデザイナーの考えも、そしてそれに対して自分はどう解釈するかのスパイスも添えて」

バンド所属時代、70〜80年代のカルチャーに強く興味を持ち、広く情報収集をしていた松本さん。その頃から、「情報収集をする」というクセが身につき、ジャズの背景にあるカルチャーやポップミュージックの背景にあるカルチャーなどにも精通するようになった。

その知識を生かして、松本さんならではの解釈で洋服の価値を伝えることが叶うのだそう。

松本「人は、ある一方向に偏ったものに対して『The(ザ)』という冠をつけますよね。逆に、広範囲に受け入れられるものを『ポップス』と呼んだりします。僕は、『The・ロック』なものと『The・ジャズ』なもの、2つのカルチャーを中心に勉強してきました。そのおかげで、一辺倒な思考から逸脱した、『ポップス』が理解できるようになった気がします」

ロックのことしか頭にない人は、ロックのことしか語れない。けれど、ジャズのことも知っていれば、ロックに対しても、ジャズに対しても、客観的な視点を持つことができるようになる。客観的な視点は、バランス感覚を産み出す。アパレルショップでの接客にも、多様なお客さんに通用するバランスの取れた話題が応用されたのだろうか。

人生は影響を受けることの連続

フィアット パンダ

奥さん、2匹の愛犬と暮らす自宅にも、『The』と大きく記されたアートが飾られている。

松本「僕はポップスを語れる人間が一番かっこいいんじゃないかなと思います。ポップスを語るには、あらゆる偏ったものを理解していなければなりません。だから、まずは『The・○○』とつくものを極めていきたいですね」

フィアット パンダ

自宅には、オーディオ機器、CD、レコードが置かれていた。インテリアからは、懐かしさとストリートが織混ざった、ドープな世界観を感じた。

松本「クルマを含め、持ち物には持ち主の一貫性があるといいですよね。イタリア生まれのフィアットにあわせて洋服や家具をすべてイタリア製にする必要はないと思っています。僕の人となりや雰囲気と並べて、『この人らしいな』と思ってもらうモノ選びができていたらいいなと思います」

フィアット パンダ

オーディオの次に目が行くのは、壁を埋めつくさんばかりのアート。そのいくつかは、松本さんの作品だ。本業であるアパレルショップ店員として働きながら、チョークアートアーティストとしても活動している。

音楽をきっかけに様々なカルチャーの影響を受けた松本さんだからこそ描ける世界観を目の当たりにした。

松本「僕らしい暮らしといっても、最初から『らしさ』を持っていたわけではありません。旧車乗りだった兄や、ロックや、BLUE NOTEで出会ったジャズやプロ意識の高い先輩スタッフ、生業としている洋服、個性豊かなお客様などたくさんのものから影響を受けて今の自分があります」

松本さんは、次なる『The』を極めることによって、これからも変わっていくのかもしれない。

自分らしさは見つけるものではなく、影響を受け続けた先にある結果だということなのか。
率先して影響を受けてみることが大切だという、教訓を得たような気持ちになった。
クルマもまた、私たちに影響を与えてくれる存在のひとつなのかもしれない。

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