Classcaに、世界で6台しかないトラベラーがやってきました。
ミニのラインナップのなかでも、質感の高いドレッシーなスタイルが象徴的なトラベラーやカントリーマン。現行車ではあまり見かけない観音開き式のリアハッチと後部を覆う木枠が特徴的です。
そんなカントリーチックなトラベラーが、車体はそのままに1275CCのエンジンを搭載していたら?トラベラーのイメージは、大きく変わるはず。
今回はクラシックミニ最強のクーパー1275Sユニットが積み込まれたスペシャルなトラベラーをご紹介します。
クーパー自身が手掛けた「S」の冠を持つトラベラー
真正面から見るとミニMK-1最強モデルの「S」が輝く。しかし、真横に視点を移すとアッシュウッドでできた木枠が目が止まる。トラベラーにも関わらず「S」の冠を持つこのモデルは、モーリスの製品ラインナップにも存在しないモデルです。
この車の由緒は、クーパー・カー・カンパニーにありました。1967年3月にたった6台だけ製造された、クーパー自身が手掛けたモデルだったのです。
その史実を裏付けるのは、このトラベラーがClasscaに納車されたときに付属されていた一枚の書類。製造者を記した証明書に記された、「Converted by the Cooper Car Comoany」の文字列は、正真正銘クーパー自身の手による作品であるということを示しています。
その他にも付属していた資料には、この車体の歴史が記されていました。このモデルを発案したのはクーパー・カー・カンパニー自身だったようで、 同社が作った一枚のリーフレットには「クーパー1275Sトラベラー」という名のカスタムプランが記されています。リーフレットの日付は1967年1月。製造時点でのボディカラーは現在と同じくオールドイングリッシュホワイト。フルレストアされる前は、一時期、濃いグリーンに塗られていた時期もあったようです。
当時、新車のモーリスミニトラベラーの価格は465ポンド。そこに500ポンドが追加され、1275ユニットへのコンバートやギアボックス、ディスクブレーキ、サスペンションモデファイ、ダンロップSP41タイヤとホイール、スピードメーター、排気系の交換という一連のカスタマイズが加わりました。
通常の価格の倍額以上の値段で販売されていた「クーパー1275Sトラベラー」。6台のファーストオーナーとして顧客リストには名を連ねたのは、クリント・イーストウッドやスティーブ・マックィーンなど60年代のスターたちです。日本にやってきた1台の最初の買い手はは特定されていないものの、この希少性からして、それなりの人物だったことは間違いないでしょう。
クーパー最強の1275Sユニットを搭載したトラベラー
エンジンルームに鎮座するのは、クーパー Sの最終に近いタイプのユニットで、排気量は最大パワーを誇った1275ccです。アクセルを踏んだときのスムーズな加速は、後ろに背負ったカーゴスペースの存在を忘れさせるほど。
ロッカーカバー上に据えられたダウントンのエンジンプレートは、アルミの地肌がむき出しになった初期のもの。
内装の素材には本革が使われています。色はタータン(赤)。オリジナルのトラベラーを忠実にレストアしています。
ダッシュパネルに並んだメーター類も異彩を放ちます。センターメーター1個のシンプルなトラベラー純正とは違い、まるでクーパー Sのワークスラリーカーのように精悍な顔つきに。
冷風・温風の調整が可能なエアコンを装着しているので夏でも冬でも快適に楽しめます。
カントリーチックなスタイルとスピードを兼ね備える
トラベラーは、牧歌的な雰囲気、広い室内が魅力的ですが、その分、ホイールベースが延長されグラスエリアも多いために重い車重に1リットル以下のユニットでスピードが出ず、坂道も辛いもの。
「エンジンさえどうにかすれば」思いは当然のごとく発生するものだったのでしょう。車のデザインはトラベラーそのものなのに、走行中はクーパーSさながらのスピード感でハイウェイを疾走するというという唯一無二の世界観を楽しめる一台です。
ハイウェイでは、クーパーSの走りを堪能してリアの牧歌的な木枠を見せつけて走り抜け、目的地に着いたら、観音開きのリアハッチを開けてピクニック。なんて楽しみがあったのかもしれませんね。
オールドイングリッシュホワイトのボディと艶の抑えられた玄人仕上げの木枠の組み合わせ、そしてスピード。さらにそこに由緒正しき歴史が覆いかぶさる。世界限定6台の特別な楽しみを、ぜひ体感ください。